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映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』公開直前試写会イベントレポート
公開日:2025年11月15日
更新日:2025年11月15日
映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』公開直前試写会イベントレポート
2023年3月にこの世を去った稀代の音楽家・坂本龍一さん。彼の最後の3年半にわたる闘病生活と創作活動を、自身が綴った「日記」を軸に描いたドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』(監督:大森健生)が、いよいよ11月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開されます。公開を目前に控えた今回、渋谷・ユーロライブにて公開直前試写会が開催され、アーティストのコムアイさんと、本作のメガホンを取った大森健生監督が登壇し、作品への熱い想いを語りました。

© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners
コムアイさんが語る、坂本龍一さんの「生きる」姿勢への感動
一足先に本作を鑑賞したコムアイさんは、映画から受け取った強烈なメッセージについて熱く語りました。
坂本さんが亡くなるシーンはどうしても泣いてしまいました。悲しさもありますが、映画を観た後わたしのなかに残ったのは「生きるのってこんなに楽しいことなんだ!」という感覚。楽しむには“サボらない”って条件もあって、坂本さんは1秒たりとも休まずに「今生きていること」と「感動すること」をサボらずに大事にしていたんだなと。わたしももっと知的好奇心を働かせて、感動して生きてやるぞ!という気持ちにさせられました。
この感想を聞いた大森監督は「コムアイさんらしい視点ですよね。色々な方に色々な感想を与えられる映画なんだなと思いました」と、完成した作品が持つ力を実感した様子でした。
坂本龍一さんと何度か対面したことがあるというコムアイさんは、その印象を「すごく力強い人。笑顔が素敵で、お茶目な方」と振り返りました。さらに、坂本さんを慕う人々との心温まるエピソードも披露しました。
数年前の年末ごろに参加したライブがあったのですが、出演していた仲間のひとりが当時坂本さんとやりとりをしていて。「闘病中の坂本さんへみんなで歌を送ろう」と呼びかけて、夜に建物の屋上でスマホを囲んで歌ったり踊ったりしました。
このエピソードからは、坂本さんがいかに多くの人々に慕われ、その存在が周囲に温かい繋がりを生み出していたかが伝わってきますね。
大森健生監督が明かす、2年半にわたる制作の舞台裏
坂本さんが残した「日記」を通して辿る3年半の軌跡。特に印象的だった言葉として、コムアイさんは「“救急車を呼んだ”とご本人が日記に書いているところがありますよね。救急車を呼ぶほどなのに、日記を書ける状態の人っているんだって思って。“大汗をかいて”とか、どうしてもその状況で事細かにそれを書くという。強烈に生命力を感じました。この映画は、人にどう生きるかを問う作品だなと思います」と、坂本さんの並々ならぬ生命力に触れました。
コムアイさんから、日記を軸にした作品の制作経緯を問われた大森監督は、作品完成までの長い道のりを振り返りました。
坂本さんが亡くなられた2023年4月2日の2日後に放送したNHKの『クローズアップ現代』という番組に一人のディレクターとして参加して、そのあと1年かけてNHKスペシャルを放送、そして、そこからさらに1年半をかけてここに登壇しています。
様々な縁で対面した遺族との対話を重ね、貴重な「日記」を提供してもらったエピソードに続けて、大森監督は「日記はただ起きたことを書く方もいれば、気持ちを整理するために書く方もいると思いますが、坂本さんは両方だったなと。人柄が窺い知れる貴重な機会でした」と、「日記」と向き合う中での発見を語りました。
また、大森監督は、坂本さんの最後の3年半という重要な時期を映し出した作品制作について、その難しさと尊さを述懐しました。
一人の人を知るということの難しさと尊さがありました。この人のことを自分はどれだけ分かることができるか?ということへの極限の挑戦でした。様々な方のご協力を得て、坂本龍一さんの後ろ姿から顔を覗けるよう、努力をしました。
さらに「音」に関して、コムアイさんは「この作品は、『音』が感覚的に入ってくる。音と映像の美しさや呼吸とかリズムみたいな間合いがすごく良くて美しかったです」と、坂本さんが大切にしていた様々な音を感じ取ることができたと言います。これに対し、大森監督も本作の音へのこだわりを明かしました。
非常に集中した空間で鑑賞するという美しい体験は映画館でしかできないだろうなと思っていたので、観終わった後に音の余韻が残ることを目指していました。

© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners
世代を超えて響く、坂本龍一さんの「世界と関わり続ける」姿勢
コムアイさんと大森監督は同世代。世代の垣根を超えて坂本さんが与え続けた影響について聞かれると、コムアイさんは坂本さんの探究心と、その確固たる想いが多くの人々に影響を与えている様子を語りました。
雨のように瞬間的に現れて、音楽として残すことができるかもしれないものへの探究心があった方だと思います。坂本さん亡くなった後、神宮外苑の樹木の伐採反対の活動に参加したんですが、そこにご本人は居らっしゃらなくても坂本さんが率いて人が集まってきたというか。確固たる想いが引力のように作用していました。
さらに、ご自身の人生を振り返り「わたしが初めてデモに行き始めたのが“NONUKES”だったかもしれない。自分の人生を振り返っても、色々なところで影響を受けてきたんだなと気付かされますね」と、坂本さんの社会活動が与えた影響の大きさを語りました。
音楽という表現を通じて、被災地支援や平和活動など、社会や世界と積極的に関わり合いを続けてきた坂本さん。大森監督もまた、その姿勢から多くのことを学んだ様子を窺わせます。
社会のことにだけ関わらず、色々なことへ関わっていくことの大事さを感じました。もし、自分が病気に直面したら、美味しいもの食べて静かに暮らしたいとか、もう少しエゴイスティックになってしまいそうですが、坂本さんは世界に関わり続けていましたよね。
観る人の心に響くメッセージ:コムアイさん&大森監督からの言葉
イベントの最後に、コムアイさんと大森監督は、公開に向けてそれぞれが作品に込めた想いと、観客へのメッセージを語りました。
コムアイさん
この映画を通して坂本さんと向き合わせていただいて、私自身も勇気をもらえたし、もっと感動してもっと楽しめることがこの世にはすごくたくさんあることを教えてもらいました。観た方は、これからの生き方について考えるきっかけになると思うので、ぜひたくさんの方に広めていただきたい。ご家族、大事な人に作品をぜひ伝えてもらえたらいいなと思います。
大森監督
今、そしてこの先の世代への橋渡しだと思って作ってきました。自分が受け取り、感じたものを誰かに渡して伝えていくという一心でこの2年半を駆け抜けてきました。身近な方々に、この作品のことをご紹介いただけましたら幸いです。
お二人の言葉からは、この映画が単なるドキュメンタリーではなく、観る人それぞれの「生き方」を問い直し、新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれる作品であることが強く伝わってきました。イベントは、会場に温かい感動を残し、幕を閉じました。

© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners
映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』作品情報
ガンに罹患して亡くなるまでの3年半にわたる闘病生活と、その中で行われた創作活動。目にしたもの、耳にした音を多様な形式で記録し続けた本人の「日記」を軸に、遺族の全面協力のもと提供された貴重なプライベート映像やポートレートをひとつに束ね、その軌跡を辿ったドキュメンタリー映画が完成しました。
Synopsis
命が尽きるその瞬間まで音楽への情熱を貫き、創作し続けた坂本龍一。本人が綴った「日記」を軸に、遺族全面協力のもと提供された貴重なプライベート映像やポートレート、未発表の音楽を交え、稀代の音楽家の最後の3年半の軌跡を辿る。今なお国も世代も超えて我々の心を掴み続ける坂本龍一は、命の終わりとどう向き合い、何を残そうとしたのか──。誰しもの胸に迫るドキュメンタリー映画が完成した。
キャスト・スタッフ
坂本龍一
朗読:田中泯
監督:大森健生
製作:有吉伸人、飯田雅裕、鶴丸智康、The Estate of Ryuichi Sakamoto
プロデューサー:佐渡岳利、飯田雅裕
制作プロダクション:NHKエンタープライズ
配給:ハピネットファントム・スタジオ、コムデシネマ・ジャポン
公開情報
2025年/日本/カラー/16:9/5.1ch/96分/G
© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners
公式サイト:https://happinet-phantom.com/ryuichisakamoto-diaries
11月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
編集部まとめ
映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』公開直前試写会イベントは、坂本龍一さんの音楽家としての偉業だけでなく、一人の人間としての生き様、そして生命力を深く感じさせる時間となりました。コムアイさんの心に響く感想や、大森監督が語る制作の裏側からは、坂本さんが残した「日記」が、いかに深い洞察と感動を与えてくれるかが伝わってきます。
病と向き合いながらも、最後まで創作活動を続け、世界と関わり続けた坂本さんの姿は、私たちに「どう生きるか」という普遍的な問いを投げかけます。この映画は、坂本龍一という稀代のアーティストの最後の軌跡を辿るだけでなく、観る人それぞれの心に、生きる喜びや感動することの大切さを再認識させてくれるでしょう。
ぜひ、劇場でこの感動を体験し、坂本龍一さんの「日記」に刻まれたメッセージを受け取ってみてください。きっと、あなたの心にも新たな「生きる」ヒントが生まれるはずです。
著者
あつめでぃあ編集部
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