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河瀨直美監督最新作『たしかにあった幻』、ついにベールを脱ぐ!
公開日:2026年01月28日
更新日:2026年01月28日
河瀨直美監督最新作『たしかにあった幻』、ついにベールを脱ぐ!
愛と命のつながりを描く珠玉の人間ドラマ
日本映画界の巨匠、河瀨直美監督の最新作『たしかにあった幻』が、2025年2月6日(金)よりテアトル新宿ほかにて全国ロードショーとなります。本作は、“愛のかたち”と“命のつながり”を深く掘り下げ、日本の失踪者問題と心臓移植の現実という、現代社会が抱える重いテーマを繊細かつ力強く描き出しています。
物語の主人公は、フランスから来日し、日本の臓器移植医療の普及に尽力するコリー。しかし、西欧とは異なる日本の死生観や倫理観、医療現場の体制に直面し、無力感に苛まれます。プライベートでは、屋久島で出会った謎めいた青年・迅との同棲生活でコミュニケーションの壁に悩む日々。そんな中、心臓疾患を抱える少女・瞳の病状が急変し、物語は大きく動き出します。
タイトルの「たしかにあった幻」という言葉は、論理的には相反する表現でありながら、本作が提案する二項対立を超えた新しい思想を象徴しています。河瀨監督がオリジナル脚本を手がけるのは8年ぶり、劇映画としては6年ぶりとなる本作は、先進国の中でドナー数が最下位という日本の臓器移植医療、そして年間約8万人にものぼる日本の行方不明者問題という二つの社会問題をテーマに据えています。
これまでの河瀨作品、『あん』で差別と偏見の先に生きる歓びを、『光』で失われゆく視力の中で気づかされた新たな愛を、『朝が来る』で特別養子縁組がもたらす命の尊さと二人の母の絆を描いてきたように、本作でも「死」が終わりではないという気づきの先に、移植医療が人の命を繋ぎ、「生」の意味を問いかけます。第78回ロカルノ国際映画祭でのワールドプレミア上映では、河瀨監督のマスターピース(傑作)と評され、その完成度の高さが世界中で絶賛されました。
豪華キャスト陣が織りなす物語
主人公コリーを演じるのは、『ファントム・スレッド』や『蜘蛛の巣を払う女』などで知られるルクセンブルク出身のヴィッキー・クリープスさん。聡明な大人の女性でありながら、時に少女のような無邪気さや脆さを覗かせ、孤独と向き合う繊細な心の揺らぎと、そこから生まれる限りない優しさを全身全霊で演じ切っています。彼女の圧倒的な存在感が、物語に深みを与えています。

© CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN FILMS – 2025
そして、コリーが屋久島で運命的に出会う謎めいた青年・迅には、若手実力派の寛一郎さん。さらに、尾野真千子さん、北村一輝さん、永瀬正敏さんといった、日本映画界を代表する名優たちが顔を揃え、物語に奥行きとリアリティをもたらしています。河瀨組の常連俳優陣が、本作でどのような化学反応を見せるのか、期待が高まります。
完成披露上映会レポート:監督とキャストが語る作品への想い
2025年1月22日(木)、テアトル新宿にて映画『たしかにあった幻』の完成披露上映会が開催されました。当日は、河瀨直美監督をはじめ、出演者の尾野真千子さん、北村一輝さん、永瀬正敏さんが登壇し、ついに完成を迎えた本作への熱い想いや、リアルな医療現場を追求した撮影時のエピソードなど、貴重なトークが繰り広げられました。
【イベント概要】
日時:2025年1月22日(木)19:30〜20:00(上映前)
場所:テアトル新宿(東京都新宿区新宿3丁目14-20 新宿テアトルビルB1)
登壇者:尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏、河瀨直美監督
河瀨監督「感無量」ロカルノ国際映画祭での反響も
昨年2025年のロカルノ国際映画祭でのワールドプレミアを経て、ついに日本で初めてのお披露目となったこの日。河瀨監督は「このような舞台挨拶ができるというのは、皆さんに映画をお披露目できる唯一無二の日です。河瀨組をいつも支えてくれる皆さんと一緒に舞台に立つことが出来て感無量です」と、満面の笑みで喜びを語りました。ロカルノ国際映画祭での反響については、「割れんばかりの拍手と『河瀨、帰って来た!』という愛を感じてグッときました。ロカルノ国際映画祭でお披露目出来て良かった」としみじみと思い出を振り返りました。
尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏が語る“河瀨組”の現場
息子を亡くし、夫の亮二(北村さん)と共にお弁当屋を営むめぐみを演じた尾野真千子さん。彼女にとって、俳優デビュー作『萌の朱雀』、そして『殯の森』以来となる久々の河瀨監督作品への参加となりました。河瀨監督から「これまで何度かオファーを出しているけれど、大女優になっているからスケジュールが合わないの」とツッコまれて笑う尾野さんでしたが、「河瀨監督から『主演以外やるの?』と言われたので『やるし!』みたいな!(笑)やると決まったら皆さんご存じの通り、恐怖の河瀨組の日々が始まります。それを知っているだけに何を勉強すればいいのか、どんな思いでいればいいのか、考えたけれど何もまとまらず。普通の役作りは通用しないので、身一つでいくしかないと。それが正解だと思って挑みました」と、河瀨組ならではの撮影現場への覚悟を覗かせました。河瀨監督は尾野さんのシーンに触れて「100点超え。河瀨組の一番強いところが出ました」と太鼓判を押し、尾野さんは「あざす!」と喜びを噛みしめていました。
めぐみと一緒にお弁当屋をする亮二役の北村一輝さんは、長編映画としては初めての河瀨組参加。「本物を撮ろうとすると当然きつくなる。それはもちろん理解して参加しました」と、徹底的なリアリズム演出で知られる河瀨組への覚悟を語りました。撮影前にはお弁当屋に見学に行き、役のモデルとなった人物と対面したという北村さん。「上っ面で演じても通じないと思った。この映画の現場に入ってお芝居を見せるというよりも、この映画で描かれているような現実がある事を伝える人間として現場に入れば良いと思った。ただの人間として入って、感じるままに現場にいました」と、役への深いアプローチを回想しました。

© CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN FILMS – 2025
心臓移植のドナーとなる少年の父親・雅也役の永瀬正敏さんは、近年の河瀨作品の多くに出演している常連。今回も「河瀨組だ!という日々」を感じたそうで、「監督は物語の前後もお撮りになるので、映画に出てこない所からも詰ませてもらえる。改めて身が引き締まりました」と感激を語りました。俳優陣は初号試写を鑑賞したそうですが、河瀨監督曰く、初号、映画祭、日本公開という編集の異なった3バージョンが存在しているそうで、永瀬さんは驚きながら「日本公開版では出演していなかったりして…」と発し、会場の笑いを誘いました。
「たしかにあった●●」キャストそれぞれの心に残るもの
イベントでは、“人生において大切にしているもの”“心にずっと残っているもの”を『たしかにあった●●』として発表する一幕も。
北村一輝さん:「たしかにあった津原さんの言葉」
「仕事がない時に僕がお世話になった人。3、4年前に亡くなってしまいましたが、仕事のない時にいつも励ましてくれてゴハンにも連れて行ってくれた。何度もくじけそうになった時に『志は大きく持て!小さくまとまるな』などと色々な言葉をかけてくれた。その人がいなければ今の自分はない。津原さんの言葉は今も胸に刻んでいます」と、故人への深い追悼の念を語りました。
尾野真千子さん:「台本」
「撮影が終わった台本は、日々スケや総スケも含めて全部取ってある。昔はスケジュールに一言コメントがあったりして、それが手書きのものだったり。それを全部取ってあるので押し入れパンパン!今後どうしていこうか悩んでいる」と、台本への深い愛着がある様子を明かしました。
永瀬正敏さん:「想い」
心臓の病で実弟を失くしていることを明かしながら、「先に逝った人たちの事を忘れちゃうのかなと思いきや、全然忘れられない。その時の想いなどは永遠に消えない。いなくなった気もしなくて、亡くなってしまって終わりなのかなと思っていたけれど、全然終わらない。想いがあったらずっとなんだと思う」と、深い言葉で会場を包みました。
河瀨直美監督:「フランスロケ」
「つまり日本公開バージョンはフランスロケが…という事です!」と、何かを仄めかし、永瀬さんや尾野さんを「マジで!?」と驚かせていました。日本公開版に隠されたサプライズがあるのか、期待が高まります。
河瀨監督が語る「生」の意味と未来
最後に河瀨監督は、「映画というものが無くなっていく時代に入ってくるかもしれませんが、2026年はもっと泥臭く、諦めない想いを持って突き進んでいく時代でもあるのかもしれません。本当に会いたい人に会いたいから会いに行くとか、夢を捨てたくないから諦めないとか、そのような気持ちでいっぱいになるような。そんな想いを主人公コリーの最後の瞬間に託しました。どうぞ最後まで楽しんでご覧ください」と、力強いメッセージを観客に届け、舞台挨拶は温かいムードの中で幕を閉じました。
『たしかにあった幻』作品概要
イントロダクション:失踪者と臓器移植の現実
本作は、フランスから来日したコリーが、日本の臓器移植への理解と普及に尽力する中で直面する文化や倫理観の壁、そしてプライベートでの葛藤を描きます。心臓疾患を抱える少女・瞳の病状急変をきっかけに、コリーは「幻」という言葉が持つ多義性と、それが「たしかにあった」という矛盾する表現によって示される、新たな思想へと導かれていきます。臓器移植と行方不明者問題という二つの社会問題を背景に、河瀨監督が問いかける「生」と「死」の意味、そして他者との関係性の中に存在する「愛」の形が、観る者の心に深く響きます。
河瀨監督が問いかける「死」の先にある「生」
河瀨監督は、これまでの作品で一貫して、旧来の常識や血縁に囚われない「愛」の形を描いてきました。本作では、先進国の中でドナー数が最下位という日本の臓器移植医療の現状と、年間約8万人にのぼる日本の行方不明者問題という、現代社会が抱える二つの大きな課題に光を当てます。「死」が終わりではないという気づきの先に、移植医療が人の命を繋いでゆく様を描くことで、「生」の意味を深く問いかけます。ロカルノ国際映画祭で「マスターピース」と評された本作は、観る者に深い感動と、生きることへの新たな視点をもたらすことでしょう。
キャスト&スタッフ
出演:ヴィッキー・クリープス、寛一郎、尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏、中野翠咲、中村旺士郎、土屋陽翔、吉年羽響、山村憲之介、亀田佳明、光石研、林泰文、中川龍太郎、岡本玲、松尾翠、早織、小島聖、平原テツ、利重剛、中嶋朋子
監督・脚本・編集:河瀨直美
製作:CINÉFRANCE STUDIOS、組画
プロデューサー:DAVID GAUQUIÉ、JULIEN DERIS、河瀨直美
音楽:中野公揮
撮影:鈴木雅也、百々新
照明:太田康裕
録音:Roman Dymny、森英司
美術:塩川節子、小林楽子、橋本泰至
編集:Tina Baz
サウンドデザイナー:Roman Dymny、Arnaud ROLLAND
サウンドミキサー:Emmanuel DE BOISSIEU
スタイリスト:望月恵
ヘアメイク:寺沢ルミ
スチール:山内悠
監督補:北條美穂
助監督:甲斐聖太郎
制作プロデューサー:齋藤寛朗
アソシエイトプロデューサー:平川晴基
制作プロダクション:CINÉFRANCE STUDIOS、組画
制作協力:カズモ
日本宣伝・配給:ハピネットファントム・スタジオ
フランス配給:advitam
インターナショナルセールス:CINÉFRANCE STUDIOS
公開情報
映画『たしかにあった幻』は、2025年2月6日(金)よりテアトル新宿ほかにて全国ロードショーです。ぜひ劇場で、河瀨直美監督が贈る珠玉の人間ドラマをご体験ください。
公式サイト:https://happinet-phantom.com/maboroshi-movie/
公式X(旧Twitter):@maboroshi_film
公式Instagram:@maboroshi_movie
編集部まとめ
河瀨直美監督の最新作『たしかにあった幻』は、現代社会が抱える重いテーマを扱いながらも、観る者に深い「愛」と「生」の意味を問いかける、まさに心揺さぶる傑作です。ヴィッキー・クリープスさんをはじめとする豪華キャスト陣の熱演、そして河瀨組ならではのリアリティを追求した映像は、きっとあなたの心に深く刻まれることでしょう。特に、完成披露上映会での監督やキャストの皆さんの言葉からは、作品への並々ならぬ情熱と、その制作過程での深い絆が感じられました。それぞれの「たしかにあった●●」のエピソードも、彼らの人間性を垣間見ることができ、作品への期待をさらに高めてくれます。2月6日からの公開が待ち遠しいですね。ぜひ劇場に足を運び、この「幻」が「たしかにあった」ことを、あなたの目で確かめてみてください!
著者
あつめでぃあ編集部
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