映画
『たしかにあった幻』河瀨組が追求した「徹底したリアリティ」とは?病院シーンの舞台裏
公開日:2026年01月24日
更新日:2026年01月24日
『たしかにあった幻』河瀨組が追求した「徹底したリアリティ」とは?病院シーンの舞台裏
河瀨直美監督の最新作『たしかにあった幻』では、そのタイトルが示すように、観る者の心に深く問いかける「幻」のような存在を、徹底したリアリティをもって描き出しています。特に注目なのは、主人公コリーが働く病院でのシーン。なんと、撮影は実際の医療現場である甲南医療センターや国立循環器病研究センターをロケーションとしてお借りして行われたんです!
毎日の撮影は、スタッフ全員が白衣や医療着に着替えるところからスタートしたというから驚きですよね。河瀨監督ご自身も「Dr.ナオミ」というネームプレートを胸につけて現場に臨まれたそうです。役として闘病中の子どもたちを演じる出演者たちも、現場に来ると必ず点滴や補助人工心臓などの医療機器を、看護師姿のスタッフに装着してもらう徹底ぶり。撮影時以外もその状態のまま病棟の中で自由に過ごし、院内学級での授業に参加したり、彼らの親を演じる俳優も一緒に付き添い親子として多くの時間を共にしたといいます。これほどまでにリアルを追求するからこそ、観る者の心に深く響く映像が生まれるのですね。
さらに、オーディションで選ばれた子どもたちは、撮影前に実際に移植手術を待機している子どもたちと触れ合う機会を持っていたそうです。河瀨監督は「劇中でコリーが雪だるまの話をするみたいに、私が移植についての絵本を読み聞かせる時間を設けたんです。実はその中に一人だけ、“ゲスト”として、本当に心臓に疾患を抱えた子にも参加してもらっていて、読み終えた後にみんなに紹介しました。その子が久志くんのモデルなんです」と語っています。こうした一つ一つの積み重ねが、本作のリアリティと感動を支えているのですね。
今回、この病院内シーンの本編映像の一部と、その舞台裏を捉えたメイキング映像が解禁されました。ヴィッキー・クリープスさん演じる臓器移植コーディネーターのコリーが、病院で奮闘する姿をぜひご覧ください。河瀨組の並々ならぬ情熱とこだわりが詰まった映像は必見です!

© CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN

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七夕に隠された運命の物語:コリーと迅、そして子どもたちの願い
本作の物語の重要な要素の一つが、7月7日の七夕です。主人公コリー(ヴィッキー・クリープス)と、彼女が屋久島で運命的に出会う謎めいた青年・迅(寛一郎)が巡り合ったのは、まさに七夕の日。そして奇しくも数年後、迅は自身の誕生日でもある7月7日の七夕に突然、コリーの前から姿を消してしまうのです。
一年に一度、織姫と彦星が天の川を超えて会うという七夕伝説。この日に巡り合い、再びはなればなれになった男女の間にあったものは、果たして失われたのか。それともそもそも存在すらしていなかったのか――?そんな問いかけが、観る者の心に深く刺さります。
今回解禁された新場面写真には、七夕の夜にベランダで迅に優しく微笑みかけるコリーの姿と、「早く移植できますように」と短冊に願いをこめる入院中の瞳ちゃん(中野翠咲)と久志くん(中村旺士郎)の姿が捉えられています。それぞれの願いが交錯する七夕の夜に、どんな運命が待ち受けているのでしょうか。愛と命のつながりを描く本作において、七夕というモチーフがどのように物語を彩るのか、ぜひ劇場で確かめてみてください。

© CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN

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『たしかにあった幻』が問いかける「愛」と「生」の意味
イントロダクション:河瀨直美監督が描く、現代社会のリアル
フランスから来日したコリーは、日本の臓器移植への理解と普及に尽力しますが、西欧とは異なる死生観や倫理観の壁に直面し、無力感に苛まれます。プライベートでも、屋久島で出会った恋人・迅との時間のズレに心を痛めていました。そんな中、心臓疾患を抱える少女・瞳の病状が急変し……。
「幻」とは、実在しないものがあるかのように見えること、あるいは存在自体が疑わしいものを指します。それを修飾する「たしかにあった」という表現は、論理的には矛盾しているように思えますよね。しかし、この相反する言葉をあえて並べたタイトルは、二項対立を超えてゆく新しい思想を提案する本作の内容を象徴しています。
本作は、河瀨直美監督にとって6年ぶりとなる劇映画の最新作であり、オリジナル脚本としては8年ぶりという意欲作です。物語を支えるテーマは二つ。一つは、先進国の中でドナー数が最下位という日本の臓器移植医療について。もう一つは、年間約8万人にのぼる日本の行方不明者問題です。
河瀨監督はこれまでも、『あん』(2015年)で差別と偏見の中で生きるハンセン病患者の歓びを、『光』(2017年)で失われゆく視力に翻弄されながらも新たな愛を見出すカメラマンの人生を、『朝が来る』(2020年)では特別養子縁組で救われた命の尊さと二人の母の絆を描いてきました。旧来の常識や血縁とは異なる、他者との関係性の中に存在する「愛」を描き続けてきた監督だからこそ、「死」が終わりではないという気づきの先に、移植医療が人の命を繋いでゆき、「生」の意味を問いかける本作が生まれたのです。第78回ロカルノ国際映画祭でのワールドプレミア上映では、河瀨監督のマスターピース(傑作)と評された本作。ぜひその深遠な世界を体験してください。
あらすじ:運命が交錯する珠玉の人間ドラマ
神戸の臓器移植医療センターで働くコリーは、小児移植医療の促進に尽力しますが、日本の死生観や倫理観の壁に阻まれ、もどかしい思いを抱えていました。そんな彼女の心の支えは、屋久島で運命的に出会った恋人・迅。しかし、彼の誕生日でもある7月7日の七夕に、迅は突然姿を消してしまいます。
一年後、迅が失踪するはるか前に彼の家族からも捜索願が出されていたことを知ったコリーは、迅の実家である岐阜へと向かいます。そこで明かされた事実から、迅との出逢いが宿命的だったことがわかり、コリーは愕然とします。一方、心臓疾患を抱えながら入院していた少女・瞳の病状が急変し……。コリーの前に次々と現れる「幻」のような出来事と、それらが織りなす真実とは一体何なのでしょうか。

© CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN
豪華キャスト&スタッフ陣が織りなす感動の物語
本作には、主演のヴィッキー・クリープスさん、寛一郎さんをはじめ、日本を代表する実力派キャストが顔を揃えています。
ヴィッキー・クリープス
寛一郎
尾野真千子
北村一輝
永瀬正敏
中野翠咲
中村旺士郎
土屋陽翔
吉年羽響
山村憲之介
亀田佳明
光石研
林泰文
中川龍太郎
岡本玲
松尾翠
早織
小島聖
平原テツ
利重剛
中嶋朋子
そして、監督・脚本・編集は、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞するなど、世界的に高い評価を受ける河瀨直美監督が務めています。音楽は中野公揮さん、撮影は鈴木雅也さんと百々新さんなど、日本とフランスの才能が結集した豪華スタッフ陣が、本作の深い世界観を創り上げています。
編集部まとめ
河瀨直美監督の最新作『たしかにあった幻』は、単なる映画の枠を超え、私たちに「愛」と「命」のつながり、そして「生」の意味を深く問いかける珠玉の人間ドラマです。徹底したリアリティを追求した撮影の裏側や、七夕というロマンチックでありながらも切ないモチーフが、物語に奥行きを与えています。観る人それぞれの心に、きっと「たしかにあった幻」が映し出されることでしょう。ぜひ劇場で、この感動を体験してくださいね!
映画『たしかにあった幻』公開情報
公開日:2025年2月6日(金)
劇場:テアトル新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本・編集:河瀨直美
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/maboroshi-movie/
公式X:@maboroshi_film
公式Instagram:@maboroshi_movie
著者
あつめでぃあ編集部
あつめでぃあ編集部が最新情報をお届けします。
